加茂の仕事唄
加茂地区の山村風景
加茂地区の山村風景
 加茂地区の人々は急峻な山々に囲まれた山村で、生活の知恵を酷使しながら 貧しい生活にも耐えて心豊かに生きてきました。 現在では、ほとんど聞くことはなくなりましたが、私たちの祖先と喜怒哀楽を ともにしてきた仕事唄に、当時の人々の生き方が偲ばれます。 ここでは、加茂地区に伝わっている仕事唄を紹介したいと思います。
【木流し唄】


道路が整備されていなかった頃、加茂地区で伐採された木材は、 加茂川を利用して西条市内へ搬出されていました。
加茂川は、水量が少なく川幅も狭かったので、雨が降り 水量が増えるのを待って流されました。
1本流しの方法で丸太に鳶口を打ち込んで 「ヨーイトコーリャ」のかけ声をかけながら、数人または 数十人で流していました。
木場に来ると陸揚げをして所有者別に材木の山をつくって いました。
「木流し唄」は、流れのゆるいところになると歌われた そうです。


     1.この子よい子じゃ ぼた餅顔よ
       黄粉つけたら なおかわい
       ヨーイコリャ ヨーオイコーリャ

     2.抱いてねもせぬ いとまもくれにゃ
       わたしゃ手習い イロハはイロはじめ
       ヨーイコリャ ヨーオイコーリャ

     3.あなた百まで わしゃ九十九まで
       共に白髪の 生えるまで
       ヨーイコリャ ヨーオイコーリャ


木流しは、昭和18年、荒川の深谷(ふかたに)で山林を伐採した時に 流したのが最後であると聞いています。
木材の流送(加茂川林業の歴史のページへ)


木流し歌(24秒)
(192K.mp3)

木流し歌(1分10秒)
(150K.asf)
【木挽き唄】
木挽き作業


木挽きさんは、繊細な技術と忍耐力を兼ね備えた方たちです。
搬出しにくい大きな材木を、「大割り鋸」を使って、 2つ割、4つ割、板等に挽き割ります。
単調な仕事ですので、根気強く孤独との戦いでした。



     1.木挽きゃ米の飯 アラメの菜で
       タタキ絣の 便がでる
       シャッコン シャッコン

     2.嫁になりたや 木挽きさんの嫁に
       嫁になるなら 来てみておくれ
       シャッコン シャッコン

     3.奥山住いの 一軒屋でも
       下は筵で 上スズの屋根
       シャッコン シャッコン

     4.人の女房と 枯木の枝は
       上りつめたら 命がけ
       シャッコン シャッコン


近年の機械化により、大割りの必要がなくなり、木挽きさんはいなくなりました。

木挽き歌(54秒)
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木挽き歌(1分53秒)

(242K.asf)
【採鉱の歌(セット節)】
盛山棒・セット・尻付・足中


加茂村にとって鉱山はドル箱的存在で、基安・新居・千町の3 鉱業所と谷崎、ホコ石等多くの採掘現場がありました。
鉱山で鉱石をたたく時、ダイナマイトの薬莢(やっきょう) を入れる穴をショウゼン(鉄の棒)を廻しながらセットで叩いて 掘ります。
カッチン、カッチンと金を金で叩く音に混じって、工夫が 口ずさむセット歌が流れます。 基安鉱山が隆盛の頃は、住友系の鉱山関係者が一堂に集まって このセット節を競い合ったと聞いています。

     1.石の硬いのか お手々のからか
       なんぼ叩いても 下りゃせぬ
       オコチン オコチン

     2.天井穴くろか 娘とねよか
       天井穴くって 一人寝る
       オコチン オコチン

     3.わたしゃこれから 芸者をやめて
       明日から工夫さんの 嫁になる
       オコチン オコチン

     4.てごやてごやと 馬鹿にはするな
       工夫さんとて もとはてご
       オコチン オコチン

昭和47年に基安鉱山が閉山し、加茂地区に鉱山はなくなってしまいました。
加茂の鉱山のページへ

セット節(48秒)
(378K.mp3)
セット節(1分29秒)
(191K.asf)

【粉ひき唄】
粉ひき作業


「正月に餅をつくと、こしきが飛ぶ」
このような言い伝えのある荒川山全域と藤之石山本郷 では、お正月に餅をつかないで、「うわもり」と呼ぶおだんごを こしらえて神仏を祭り、雑煮にしたり、焼いて食べていました。  →もちなし正月

「うわもり」は、米の粉をひき、ねって、まるめて蒸し、 直径5〜6pのお餅状のものに仕上げます。
臼がきしみながら廻るメロディーと臼の回転のリズムに乗って 口ずさむ「粉ひき唄」は、のどけさの中に厳しさが詰まっている 女の生きざまでもあります。


     1.臼よ廻れよ みかげの石よ
       入れて廻せば 粉がおりる

     2.此処で米買うて 利はないけれど
       娘見たのが 利でござる

     3.臼よ廻れよ シャンと廻れ
       門で殿御が 待ちかねる

     4.可愛 可愛は 人目の義理よ
       何で可愛けりゃ 人の子を

粉ひき唄(42秒)
(499K.mp3)
粉ひき唄(1分32秒)
(195K.asf)

【麦打ちの唄】
麦打ち作業


加茂地区は、田畑の少ない山間部なので、山作で雑穀類を栽培して 主食にしていました。
穀類の収穫には脱穀の作業があります。
門先にむしろを敷き詰め、作物を並べて「カラサオ」でたたいて 落とします。
6月の日盛りの麦落としは、暑くて、はしかくてやりきれないものでした。
カラサオの音の合間を縫って、誰からともなく「麦打ち唄」が聞こえてきます。

     1.かんば かげなし こたにの四郎兵衛
       金でせかすは ノホボーエ この四郎兵衛

     2.ねんねこしようや 植田の中で
       稲を敷床に ノホホーエ あぜまくら

     3.寝てもねぶたい この夏の夜に
       夜業せいとは ノホホーエ 誰が言うた

     4.夜業せいとは かみさんが言うた
       おいて休めと ノホホーエ 旦那さんが言うた

       たん たん たん たん
       たん たん たん たん


麦打ち唄(40秒)
(319K.mp3)
麦打ち唄(1分9秒)
(147K.asf)

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